テーピング理論を用いた高齢者向けのサポーター開発

超高齢社会に突入し軽度要介護認定者の増加率は著しく、その原因の約半数が運動器に関連する項目が占めていると言われています(内閣府2013)。高齢者の関節疾患には、変形性腰椎症と変形性膝関節症が多く、様々な日常生活の動作に障害を生じてしまいます。

要介護認定を受けずに自立した生活を送るために、高齢者の方々が外的支持装置として体幹をサポートすることで日常動作(前屈み、立ち上がり)に変化が起こるのか、三次元動作解析装置を用いて腰部、胸部、股関節角度で検証しました。

本研究に使用したサポーター

条件は、サポーター無条件(何もしない)、サポーターA条件(当方が仮制作した体幹サポーター)、サポーターB条件(一般的な腰部だけのコルセット)の3種類を装着して行いました。

被検者

体力テスト

心身ともに健康な高齢者男性7名と女性12名(年齢75.9 ± 3.2歳、身長155.7 ± 8.9cm、体重55.92 ± 9.1kg)の方々に協力して頂きました。

 

年齢 身長 体重
(歳) (cm) (kg)
男性(n = 7 76.1 ± 3.0 164.7 ± 5.7 66.0 ± 7.2
女性(n = 12 75.8 ± 3.9 150.5 ± 2.8 50.0 ± 5.6
合計(n = 19) 75.9 ± 3.2 155.7 ± 8.9 55.92 ± 9.1

キネマティクス

心身ともに健康な高齢者男性1名(年齢78歳、身長160cm、55kg)に協力して頂きました。

結果-1

  • 椅子の立ち上がりでは、サポーターを何もしない条件とA条件(体幹サポーター)、サポーター無条件とB条件(一般的な腰部のみのコルセット)、A条件とB条件の間に有意な差が認めらました(p<0.05) 。
  • 10m障害物歩行では、A条件とB条件間に有意な差が認められました(p<0.05)。
  • Timed Up & Go Testでは、A条件とB条件間に有意な差が認めらました(p<0.05)。

結果-2

前屈動作で検証すると、サポーターを何もしない条件では股関節制限のある異常な体幹屈曲姿勢を呈していました。一方で体幹サポーターでは、腰部・胸部共に正常な前屈姿勢に近づく結果となりました。

結果-3

高齢者の立ち上がり動作は、体幹を大きく前に曲げて地面により体を近づけた状態から、その反動を使って立ち上がる形を取ると言われています(小島,1998)。

この実験では、サポーターを何もしない条件では、典型的な高齢者の立ち上がり方になりましたが、体幹サポーターをした条件では、膝伸展筋群に依存する立ち上がり方を示した事から、正常な立ち上がり方に近づきバランスを保持して立ち上がる事が出来るようになったことが分かりました。